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トップページ > 活動史(21世紀) > 喜劇映画研究会 2004年 夢の森にて2004 上映作品解説
喜劇映画研究会 2004年

夢の森にて2004~生演奏&パフォーマンス付き上映会
上映作品解説

※当日のパンフレットの内容をそのまま引用しております。

醒めぬ夢 深い森へようこそ!

お蔭様で12年目12回目の開催となりました「夢の森にて」。チラシの記載では13年目と間違ってしまいましたが・・・これもひとえに皆様のご支援あってこそ!今回もご来場を有り難うございます。初めてご参加される方にも深く感謝致します。

12年目といえば干支が一回りした事になります。昨年はロシア映画を中心にプログラミングしましたが、今回は申年という事で干支をテーマに作品をセレクトしてみました。

そして!たま、パスカルズ、ソロでの音楽活動、おもしろエッセイ、役者、B級グッズの超絶コレクターとして大活躍のスーパ-スター石川浩司さんが遂に参戦となりました!

他では絶対にサル真似できないウルトラ演奏と活弁パフォーマンス「夢の森にて」で本年最初の森林浴をお楽しみ下さい!

                                      

喜劇映画研究会 新野敏也



Aプログラム
「敵もサル者」Be honest(アメリカ)日本未公開

*邦題は喜劇映画研究会が独自につけたものです。

tekisaru
製作:ハル・ローチ、監督:レン・パワーズ
出演:猿、犬、アヒル、ガチョウ
パテ・エクスチェンジ=ハル・ローチ・スタジオ 1924年作品
音楽監督:高良久美子、弁士:石川浩司、台本作成:新野敏也

製作のハル・ローチは、ハロルド・ロイド、ちびっ子ギャング、ローレル&ハーディなどをスターに育て上げた映画道80余年の大プロデューサー。1992年に100歳で大往生するも、今もってギョーカイに影響力のあるスゴイ人。本作は、そのローチ習作にして珍品中の珍品。

一説によると、ディズニーの動物アニメを見たローチは、実写版で動物と子供だけが主演する映画を作ろうと考えたらしい。そこで『アニマル・キッズ・コメディ』というシリーズを発案、第一作目がこの「敵もサル者」となった。まぁ、ギャラは人間より安い筈だが、結果的には『ちびっ子ギャング』だけが全世界のアイドルとなって、サル君たちは映画界を去るが・・・映画が若い時代の、純真な出演陣の初来日に笑顔を贈ろう!

 

「デブと海嘯」Fatty and Mabel adrift(アメリカ)

*邦題は大正五年の初公開時のものです。

debutsunami
製作:マック・セネット、監督:ロスコー・アーバックル
出演:ロスコー・アーバックル、メーベル・ノーマンド、
   アル・セント・ジョン
トライアングル=キーストン・フィルム・カンパニー 1916年作品
音楽監督:三木黄太、弁士:石川浩司、台本作成:藤本ヨシカズ

古田新太が肉襦袢を纏って熱演した"デブ君"ロスコー・アーバックル本人を今回は石川浩司師匠がオリジナル・ファッションで熱弁する!? 年末の横綱 曙vs.ボブ・サップを凌駕する時代を超えたヘビー級メガ・バトル『アーバックル対石川浩司』に期待ワクワク!

アーバックル(1887~1933)は、かのバスター・キートンの映画の師であり、今日でいうところの無声映画時代の三大喜劇王チャップリン、ロイド、キートンをも助演とした伝説のスーパースター。1921年に強姦殺人の嫌疑がかけられ、母国アメリカではフィルムの一斉排斥が沸き起こり、カムバックもむなしく失意のうちに世を去った悲運の天才コメディアン。往時には所属するパラマウント社で興行収入第1位を記録、世界で最もギャラの高いスターとなっていた。かの淀川長治氏も幼年期に見た最もおもしろい唯一のコメディアン!と本作の思い出を語っている。

そのアーバックル作品は排斥運動の煽りから大半が現存せず、本作も1980年代後半までは途中10分くらいが行方不明となっていた。今回はアメリカで修復され、公開当時の手彩色を再現したノーカット版が上映される。


「無理矢理ロッキー破り」Play safe(アメリカ)

*邦題は昭和三年の初公開時のものです

rocky1 rocky2
監督:ジョゼフ・ヘナベリー、再構成:新野敏也
修復協力:児玉数夫、岡崎英夫(IMG)、岡本好史
出演:モンティ・バンクス、ヴァージニア・リー・コービン
パテ・エクスチェンジ 1927年作品(喜劇映画研究会1996年復刻)
音楽監督:太田惠資、弁士:石川浩司、台本作成:新野敏也

本作は記録によれば現在の秒24コマ映写でも60分くらいの作品とされているが、オリジナル全長版は現存せず。かの淀川長治、色川武大、筒井康隆の超巨頭三氏が幼年期に見て最も鮮烈な思い出を持つ映画という。筒井氏は『不良少年の映画史』(1979年・文春文庫)で丸々1章を本作の紹介として綴っている。

今回上映されるフィルムは、その"幻の傑作"を当会が1996年の結成20周年記念事業として復刻したもの。復刻にあたっては、映画評論家にして喜劇愛好家の児玉数夫氏に初公開時のプレスシートからオリジナル・ストーリーを探し出して頂き、アメリカの私設映画資料館EM GEEに眠るクライマックスの一部(35mmネガ)と、アルゼンチンに残存する若干のドラマ部分(戦前のパテ・ベビーという9.5mm幅フィルムの映画ソフト)を16mmに焼き直し再構成した。現在では世界で唯一のロング・ヴァージョンとなる。

余談であるが、1961年にロバート・ヤングソンが監修した無声映画時代の喜劇のベスト・アンソロジー"Days of Thrills and Laughter"の日本公開に先立って行なわれた試写で、本作クライマックス部分を観た山田宏一氏と和田誠氏が思わず『シネ・ブラボー!』と叫んだために、このアンソロジー映画の邦題がそのまま「シネ・ブラボー!」となってしまった!なんて嘘クサイ逸話もある。

主演のモンティ・バンクス(1897~1950)は第一次世界大戦前にイタリアで喜劇俳優としてスクリーン・デビューを果たし、渡米してパテ・エクスチェンジ、ワーナ・ブラザースで活躍の後に渡英、監督へ転身してチャップリンの実兄シドニーの主演作品などでスマッシュ・ヒットを飛ばした俊才。若きモンティ自らが演じた献身的なギャグに、喜劇映画が最も偉大であった時代の魂を再認識しよう!



Bプログラム
「キートンのカメラマン」The cameraman(アメリカ)

*邦題は昭和四年の初公開時のものです。

cameraman1 cameraman2
製作:ルイス・B・メイヤー、監督:エドワード・セジウィック
出演:バスター・キートン、マーセリン・デイ、
   ハロルド・グッドウィン
M.G.M.=バスター・キートン・プロダクションズ 1928年作品
音楽監督:谷川賢作、弁士:石川浩司、台本作成:藤本ヨシカズ

今も熱烈なファンを多く持つ永遠の喜劇王キートン。本作はキートンの教条的な充血マニアから『独立プロダクションと別れを告げ、大資本に移籍した後の、見る価値のない凡作の第一弾』と謗られ、永い間"幻とされていた長編"。ところがどっこい、マニアの価値観と一般ウケは大きな差がある事を証明する、文句なしの傑作!大資本に支えられた撮影法やセット、キートンお得意のスットボケは一層の磨きがかかっている。

本作の戦後公開は唯一当会だけ、それも1995年に当地アテネ・フランセでの「キートン大全集Ⅲ~生誕百年記念~」が最後となっていた。その、9年前の特集企画ではアルゼンチンの個人コレクター、エンリク・ブッシャール(エンリック・ブーチャード)氏が所有するプリントからのデュープ(それまではM.G.M.でもプリントは現存せず、ネガも修復不能のために再上映は永遠に不可能とされていた)を上映していたが、今日までの間にテクノロジーの進歩と、古典映画保存の気運は高まり、遂にアメリカ発の復刻版ニュー・プリントが到着!改めて"笑わぬ喜劇王"のリバイバルとなった。経年劣化によるネガの傷やカビはさておき、甦ったギャグのディティールは鮮度をも取り戻す!申年初の大笑いココにあり!                       
(上映作品は全て16mm、24駒/秒で映写)