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喜劇辞典 た行

【つかみ】

舞台などの上演で開始直後の客席の反応。「つかみはOK」などといった場合は、出だし好調(最初に観客の心を掴んでいる)を意味する。演目の出だしを同義語では「さわり」とも呼ぶが、「おさわりOK」と言った場合は別ジャンルの舞台でのみ使用される営業用語で、本項とはまったく関係ない。(A)

【動物喜劇】

擬人化した動物の演技、または動物だけの世界観で描いたコメディ。近年の『デイブ』などがその代表例。歴史は古く、おとぎ話や寓話に倣った大道芸(猿回し等)、サーカスの曲芸(犬のサイクリングや熊のダンス等)に始まり、1917年よりアメリカ映画界では大物プロデューサーのマック・セネットが犬(テディ、カメオ)や猫(ペッパー)といったサブ・キャラクターを設定して人間と同格の人気を博した。この後、『ミッキー・マウス』『フェリックス』といった漫画キャラクターよりヒントを得たセネット最大のライバル、ハル・ローチが1924年から『Animal Kids Comedies』シリーズと銘打って猿、犬、アヒルなどを主人公に、人間が登場しないドラマを制作した。因みに、このシリーズより派生したヒット作品が『ちびっ子ギャング』である。このハル・ローチ『Animal・・・』シリーズの作風は、その後1960年代をピークとする良質のディズニー作品へ逆コンバートされた。日本では昭和30年代後半、ジュースのTVコマーシャルにてチンパンヂーがバーテンダーの演技を、谷啓が「う~ん、バヤリース!」とセリフを担当して大ヒット、また昭和40年代にアメリカ製の幼児向け番組『チンパン探偵ムッシュバラバラ』、さらには『むしむし大行進』といった支離滅裂なドラマ(?)へと発展した・・・。動物の演技が人間的に洗練(調教)されている程、評価や完成度も上がるが、成長の早い仔猫や寿命の短い昆虫などを使用する場合や進行上のコミュニケーション等、撮影現場でのスタッフの苦労は並大抵ではなく、動物愛護的観点からも近年ではほとんど製作されなくなり、『ジュマンジ』『101』『スチュアート・リトル』のようなCGアニメに、その主要な演技(表現)は変わっている。(A)

【トーキー】(talkie:英語)

現在はあたりまえだが、「音と画」が同時に記録されている映画。
トーキー方式が地球全体に浸透するまでの間、一般的に映画は音のないメディアと考えられていた。ゆえに1930年代前半までの音なし映画を「サイレント(無声)」、以降の音入り映画を「トーキー」と映画史・技術史では区分している。正式呼称は「talking film」、または「talking movie」で、「トーキー」という語源はtalking movieの略称から。映画史では、1927年、ワーナー・ブラザース社系列ヴァイタフォン社の『ジャズ・シンガー』発表をトーキー元年とする。画と音をシンクロさせる再生方法は、映画発明直後の1895年のエジソン社ウィリアム・K・L・ディクソンによる蝋管式蓄音機と映写の同調実験に始まり、1912年にはユージン・ローステが音の振幅を波形化し画とならべてフィルムへ焼き込む方法を確立(ただし現行の35mm幅のフィルムで画面比率は25%以下)、1921年のトリ・エルゴン42mmフィルムで画郭を拡大などなど、『ジャズ・シンガー』での興行的成功までは様々なフォーマットや技法による試行錯誤が繰り返されていた。とまぁ、『ジャズ・シンガー』は全編トーキ-ではないのだが、この発明によってセリフ、歌、効果音など、表現のバリエーションは広がり、漫談やミュージカル喜劇なども作られるようになった。一方では、トーキー初期の「音」ブーム過熱によって、悪声、訛り、喋りの苦手な者などは一斉淘汰され、パントマイム主体の道化師は時代遅れの産物と見なされるに到った。当時をハロルド・ロイドは「コップへ氷を入れるシーンでカラカラ音が鳴るだけでも観客は大喜びするので、我々が何を腐心してギャグを作ってきたのかわからなくなった」とその心境を語っている。そして歌あり漫談ありの時代到来となる。トーキーならではの喜劇人はマルクス兄弟、ボブ・ホープ&ビング・クロスビー、エディー・カンター、ダニー・ケイ、榎本健一、ディーン・マーティン&ジェリー・ルイス、クレージーキャッツといったところ。尚、サイレント期の悲劇的な大物俳優ロスコー・アーバックルもトーキー初期の低予算短編『デブの妄想狂』では効果音を巧みにギャグとして用いていた。トーキーが当然至極の近年では「サウンド・デザイナー」という音作りの専門職がある。(A)

【特殊効果】

現実一般には見ることのできない事象を通常の撮影以外の技法で表現した映像的な効果。
二重に画面を合わせて心霊現象を表現したり、フィルムのコマを抜いて突然人物が消えたように見せかけるなどの類。ひと昔前まで日本では「特撮」と呼ばれていた技法。
特殊効果の元祖はもともと奇術師でもあったジョルジュ・メリエス。映画誕生間もない1896年頃、撮影中カメラにフィルムがつっかえたことから「突然人物の消えてしまう現象」を発見、トリック効果を見出したという。1902年公開の『月世界旅行』は10分そこそこの短編だが、特殊効果の精神のすべてを表現した映画史に残る傑作である。また、『探偵学入門』でバスター・キートンが映画のスクリーンの中に入って、周りの風景が次々と変わっていくシーンも印象深い。
「特撮」という呼称は「特殊撮影」を略した語。現像や編集のプロセスでも特殊効果は行われるが、以前は撮影時にほとんどの特殊効果が行われていた。ハリウッドの「キングコング」はもちろん、日本でも円谷英二を核として「ゴジラ」「ガメラ」「大魔人」など多くの特撮映画シリーズが制作された。だがコンピュータ・グラフィックス(略してCG)全盛の現在、スクリーン上では「なんでも可能」が常識となってしまった。「特撮」を売り物にするだけで観客は動員できないというパラドックスが生じ、「特撮」という用語は死語になりつつある。最近では「SFX」(special effectsの略)という用語の方が一般的。
ちなみに特殊浴場は「特浴」とも略すが、通常「ソープ」と呼ばれ、各地に根強い愛好家をもつ。(A/F)

【ドタバタ/ダアダア】

スラップスティック・コメディの日本語訳。
「ダアダア」は中原弓彦氏(またの名を小林信彦センセイ)の造語で、白痴的なドタバタを示す。ジェリー・ルイスやピー・ウィー・ハーマンが「ダアダア」、バスター・キートンやローレル&ハーディが「ドタバタ」の区分。どこがどう違うかは見てのお楽しみ・・・(A)