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喜劇辞典 な行

【ナンセンス】(nonsense:英語)

「ナンセンス」とは文字通り「意味(センス)がない」こと。
意味(センス)のつながり、常識的にありうる展開、因果律を放棄したところにナンセンスな笑いは生まれる。『マザー・グース』の唄や、脈絡ないストーリーに言葉遊びの波状攻撃が繰り広げられる『不思議の国のアリス』など特にイギリスにはナンセンス文学の伝統がある。「オウムが死んでいることをまったく認めようとしないペット屋」「読んだ人間は必ず笑い死ぬ恐怖のギャグ爆弾」などなど、モンティ・パイソンはナンセンス・コメディの宝庫だといえるだろう。
落語にも『頭山』などナンセンスと呼べるものがあるが、それ以外の扇子を駆使して笑わせる落語を「センス」というジャンルに分類してはならない。(F)

【ヌーベル・ヴァーグ】(nouvelle vague:仏語)

1950年代終わりにジャン・リュック・ゴダール監督を中心とした、フランス映画界より発信された技法。または同世代の作品を示すジャンル名。
直訳すると「新しい波」、いわゆる映画史のニュー・ウェイブ。既成の映画製作とは違った手法による~と衒学的な仏文系シネアストに喧伝されているが、アヴァン・ギャルドとは何が違うか?大雑把に解説すると、ハリウッド系のドラマのようなセットや三脚に固定したカメラでの表現的制約を捨て、手持ちカメラや自由奔放な構成で物語を組み立てる・・・といったところ。発想としてはアヴァン・ギャルド時代に確立されていたが、何がどうなろうとドラマ性が縦貫している点、古典的名画への尊敬を表す点がアヴァン・ギャルドとの違い。テイスト別に喜劇作家を紹介するならば、ハリウッド調に構成されているが独自の新領域と懐古趣味を再発見したジャック・タチ、アンニュイで脆弱な雰囲気を漂わせるフランソワ・トリフォー、ポップ・カルチャー系のリチャード・レスター、摩訶不思議な心理描写のフィリップ・ド・ブロカなど。ネオ・リアリスモを経たフェデリコ・フェリーニも系統的には同じコミカルな味を持つ。参考作品は、ゴダールとトリフォーが共同監督して喜劇の帝王マック・セネットへ捧げた短編『水の話』、ルイ・マル『地下鉄のザジ』、リチャード・レスター『僕の戦争』、ジャック・タチ『トラフィック』などなど、ただし、ヌーベル・ヴァーグの解釈自体が曖昧なので、読者御自身の審美眼で比較検討すべきテーマ!?(A)

【ノックアバウト・コメディ】(knockabout comedy:英語)

スラップスティック・コメディの過激ヴァージョン!
現代の喜劇映画では、低予算か大作かの違いでスラップスティック・コメディとの区別はなくなっている。サイレント期のドタバタ喜劇にのみ適応されたジャンルで、ストーリーよりも派手さがウリの爆裂型コメディ。例えば、人間や自動車の追っかけがスラップスティックとするならば、機関車と飛行機の対決がノックアバウトである。代表作はラリー・シモン『Bell hop』『The grocery clerk』など。ブルース・ブラザースやレ・シャルロはノックアバウト・コメディのDNAを受け継ぐ末裔と考えてもよいであろう。(A)